予約よりも早めに着いた私は、緊張しながら心療内科のドアを開けました。
受付がすぐにありました。
「10時に予約したこはるです。」
そう告げると、受付の方から問診票を渡されました。
過去に精神科や心療内科を受診したことがあるかなど、内科にはない細かな質問が多く、いろいろ考えながら記入したので、少し時間がかかりました。
それが終わると、呼ばれるまで待合室で待っていました。
待合室には思ったよりも多くの人がいて、「こんなにもたくさんの人が通っているんだな…」と感じました。
診察室に入ってすぐに出てくる人は再診の方なのだろうと思いながら、予約の時間を1時間ほど過ぎた頃、ようやく名前が呼ばれました。
部屋に入ると、先生の大きな机があり、その前にソファのような椅子が置かれていて、そこに私が座りました。
男性の先生が優しい声で私に聞きました。
「どうされましたか?」
私はこれまでの夫のこと、夫を調べていること、その事実、浮気を知っているのにいつも通りに生活する辛さを話し始めました。
そして、よく眠れないこと、食欲がなくなり体重が10キロ近く減ったことなども伝えました。
途中、涙が溢れて話せなくなりました。
うんうんと頷きながら私の話をカルテに細かく書いていた先生は、机の上のティッシュを私に差し出してくれました。
病院の先生の前であんなに泣いたのは初めてでした。
先生は私の話を静かに聞いたあと、いくつかの質問をされました。
例えば、「今まで好きだったことができなくなったことはありますか?どんなことですか?」といったようなことです。
私は、好きだったお酒も全く飲めなくなり、たまに作って楽しんでいた手芸も全くする気力もなくなったことを思い出しながら、ゆっくり答えました。
自分の今の状況を第三者に聞いてもらい、
この状態がいかに辛いことなのか、そしてだからこそ、こうした症状が出るのは人として自然なことなのだと理解できたことは、とても救いになりました。
そして、睡眠導入剤とうつ病の薬を処方してもらい、「うつ病の診断書」を受け取りました。
薬については「副作用が出たり、人によっては合わないかもしれません」と言われましたが、実際に飲んだ日は、気分の落ち込みが少し楽になり、車に乗るたびに泣いていた回数も減りました。
夫との話し合いまで、しばらくはその薬に助けてもらいました。
そして、夫との話し合いの際、この時にもらった診断書を見せた時、夫はしばらく黙ってそれを見つめていました。
「体調が悪くなった」「心が壊れた」「眠れなくなった」――そんな私の言葉よりも、この診断書一枚のほうが、その事実を伝えるのに一番効果があったのではないかと思います。
ただ、それによって夫が反省したかどうかは不明ですが――。
そして、この調査の日々の中で、私の心を助けてくれたものがありました。
それは、夫のことを相談できた先輩や友人の存在です。
次はその話を書こうと思います。
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