探偵に「調査には一ヶ月ほどかかる」と言われていました。
それをなんとか早くお願いできないかと頼み、約3週間後──「報告書が用意できた」という連絡が入りました。
すぐに探偵と会い、パソコンの画面を通して報告書をひとつひとつ確認していきました。
女と夫が並んで店から出てくる姿。
女の車から降りる夫の姿
女の部屋から二人で出てくる姿。
夫を見送る女の姿
夜の撮影は多少見えにくいものもありましたが、週末の昼間に撮られた写真はしっかりと顔が確認できるものでした。
女の顔を見て、思わず心の中でつぶやいてしまいました。
「こんな女と……」
悲しみと悔しさが一気に込み上げてきました。
確認を終え、今後の話を探偵とし、感謝を伝えて別れました。
長い付き合いになった探偵とも、これでようやく終わりです。
家に帰り、すぐに調査費用の残金を振り込み、探偵が確認したあと、データが私のアドレスに送信されました。
届いたデータをそのままパソコンで夫に見せる方法も教わりました。
しかし、その場でパソコンを夫の前に出す──そんな冷静さは、とても持てそうにありませんでした。
私は紙に印刷し、報告書の形にまとめることにしました。
長期にわたるデータ、複数の女……その量は膨大でした。
印刷をしている途中でインクが無くなり、慌てて家電ショップへ。
ようやく一冊の報告書が出来上がりました。
写真をすぐに取り出せるよう、インデックスもつけておきました。
そして、事前に準備したシナリオを元に、何度も予行演習をしました。
証拠は探偵の報告書だけでなく、私が撮った証拠写真も加え、さらに過去の数々の裏切りの証拠もコピーを取って準備しました。
頭の中で繰り返しシミュレーションし、どんな言葉で切り出し、どのタイミングで証拠を見せるか──すべてを想定して心を整えました。
もう準備は万端です。
Xデーは週末の土曜日。夫に用事が入っていない日を選びました。
さらに、夫がお酒をまだ飲んでいない日中──冷静に話し合える時間帯をあえて選びました。
感情をぶつけるのではなく、あくまで淡々と事実を突きつける。
そのための環境を、最後までしっかりと整えたのです。
そして、とうとうその日を迎えることになります。
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