「探偵」——
それは、私にとってドラマの中だけの存在でした。
身近にそんな仕事をしている人がいるなんて、
こんなことがなければ、きっと知らないまま一生を終えていたかもしれません。
そんな私が——
探偵事務所に電話をかける日が来るなんて。
私は、それほどまでに切羽詰まっていたのです。
このことは、
いつも相談に乗ってもらっていた職場の先輩にも、
今でもこう言われます。
「こはるさん、あのときの行動力はすごかったよね」と。
——あの時、
自分でも驚くほどの行動力が出たのは、
きっと何かが私を突き動かしたんだと思います。
スマホで
「探偵 〇〇市」
と、自分が住んでいる地名を入れて検索しました。
いくつか探偵事務所が出てきたけれど——
どこに頼めばいいのか、さっぱり分からない。
ネットには、
「撮れなかった」
「証拠ももらえず、料金だけ取られた」
そんな話が溢れています。
私の周りには、探偵を頼んだ人なんて一人もいない。
当然、ツテもありません。
迷いに迷った結果、
わざわざ遠くまで行く気力もなく、
結局、近くの事務所で、ちょっと大きそうな名前の探偵事務所に決めました。
緊張しながら電話をかけると、
男性の声が対応してくれました。
私は、すぐにでも調べて欲しかったので——
「今日、相談に伺いたいのですが…」
そう伝えて、
その日の夕方、探偵と会うことになったのです。
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