夫の調査が始まりました。
私の役目は、夫の予定を把握し、それを探偵に伝えること。
平日の飲み会の予定、休日にどこへ行くと言っていたか、出張はいつなのか――
私は、まるで夫の“監視者”のようでした。
「今週末はどこか行くの?」「今夜は飲み会?」
さりげない会話を装いながら、情報を探ります。
毎日24時間、夫の行動に神経を張り詰めていました。
探偵に予定を伝える以外にも、私は夫の行動をくまなくメモしていました。
何時に起きて、何時にシャワーを浴び、何時に出勤したか。
何時に帰宅して、どんな会話をしたか。
そして、何時に就寝したか。
些細なこともすべて、スマホのメモに記録し続けました。
そのメモには、夫が出張で不在だった期間を除いて、
約5ヶ月間ほぼ毎日、夫の行動が残されています。
そして――
あまりにそれが習慣になってしまったせいか、
もう調査を終えているにもかかわらず、
今も私は、夫の帰宅時間や一日の様子を
無意識にスマホにメモしてしまうのです。
・・・これって、やっぱり異常ですよね。
でも、どこかで「今も女と会っているのではないか」
そんな疑惑が消えないのだと思います。
だから、やめられないんです。
調査中
すべて探偵に任せることになりますが、
その間も「今どうなってるんだろう」「うまく尾行できてるかな」と、
気が気でなくて、家の中を意味もなくうろうろしていました。
「証拠は撮れただろうか……」
「今日はどこへ行ったんだろう……」
もちろん、不発に終わる日も少なくありません。
何もなかったという報告が続くと、調査回数や期間が増え、
そのぶん調査費用もどんどん膨らんでいきます。
本当は、心の底では「女と会ってほしくない」と思っているはずなのに、
一方で「今日は女とホテルに行ってほしい」と願ってしまう――
そんな矛盾した気持ちに、自分でも戸惑っていました。
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