調査が始まり、週末になると夫が“女の部屋”に通っていることが分かるようになってきた頃――
ある日、夫のことを相談していた友人と一緒に、その女の部屋を見に行きました。
場所を確かめたかった、それだけです。
まさか本人に会うことになるなんて、思ってもいませんでした。
その日は平日の夕方。
「どうせまだ帰っていないだろう」と思っていたのですが、
現地に到着すると、女の車がすでに停まっていました。
思わず
「え?家に居る?」と声を出してしまいました。
女の車が見える少し離れた場所で友人と話しをしていると、
なんと…
女が部屋から出てきて車に乗り込んだのです。
「どうする?追いかけてみようか?」
そう言って、友人がすぐに車を走らせてくれました。
彼女が誰なのか、どんな仕事をしているのか、まったく情報がない状態だったので、
何か少しでも掴めれば…という思いでした。
車の距離をあけながら、数分間だけ追いかけてみたところ、
彼女の車は、とある一軒家に入っていきました。
私たちはその場所と表札だけを確認し、そのまま引き返しました。
でも――
これは探偵に、かなりきつく怒られました。
「もし相手に気づかれたら、調査が続行できなくなりますよ」
「今後、絶対に接触はしないでください」
そう、きっぱり言われたのです。
また、打ち合わせのとき、私はふと本音を漏らしました。
「いつか偶然を装って、二人の食事現場に乗り込みたい…」
そう話すと、探偵は私をなだめるように
「その気持ちは分かります。でも、それは絶対にやめてくださいね。」
そう答えました。
あとでネットで調べてみると、
密会現場に突撃した人の中には、感情が抑えられなくなり、
暴力沙汰になるケースもよくあるそうです。
自分は絶対大丈夫・・とは思いますが、いざとなったら分からないですよね。
だから私は、自分の心に何度もブレーキをかけました。
「証拠を確実に掴むまでは、絶対に接触はしない」
そう自分に言い聞かせ、耐えて、我慢して、ただ時間が過ぎていくのを見ていました。
コメント