その日の朝、本当に今日話せるのか、不安と恐怖で胸が押しつぶされそうでした。
「今日じゃない方がいいのでは」そんな思いが頭をよぎります。
しかし──
夫の財布を見た時、新たにED治療薬が4錠も出てきました。
「また、不貞をしに行くつもりなんだ。今日もこれから行くかもしれない」
その瞬間、迷いよりも怒りがわたしの中で一気に勝ちました。
ED治療薬と、同じく財布に入っていた竹原との指輪もその場で回収。
そして夫の車に向かい、置かれていた別の女との指輪や避妊具などの証拠品も回収しました。
テーブルに探偵の報告書だけを置き、これまでの証拠品、示談書、誓約書などは順番に出せるよう、脇にそっと準備していました。
これで準備は整いました。
手が震え、心臓が早鐘のように鳴る中、意を決して夫を呼びに行きます。
寝室でくつろいでいる夫に声をかけました。
「ちょっと話があるから、リビングに来て」
夫は、私の声の調子から、何かただならぬ気配を感じ取ったのでしょう。
あきらかに面倒くさそうな顔をして「なに?ここじゃだめなん?なんなの」と言いました。
「大事な話があるから、早く来て」
私は繰り返しそう告げました。
しぶしぶ夫は立ち上がり、ダイニングテーブルへと向かいます。
その表情はすでに怒りで固まっていました。
テーブルの上の証拠に視線を落とし、夫は重い空気の中、渋々席につきます。
「はい。座りましたけど……なんですかね。」
ぶっきらぼうに、夫が言いました。
私は夫と向かい合った席につき、静かに話を始めました。
怒りと悲しみと悔しさ──
夫婦の間を渦巻く時間が、ここから始まるのです。
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