夫のいる寝室に行き、話を始めました。
「昨日は言いたいこと溜まってたから強い言葉を言ってしまって反省してる。
私はあなたと言い争って離婚したいわけじゃない」
そう私が切り出すと、夫は冷たい返事を返してきました。
「はい」
私は続けました。
「あなたが不貞していないって言うなら、納得はしてないけど、それに関してはもういいから。
その代わり、やってほしいことがあるの」
「なに」
「年金分割の合意書にサインが欲しいの」
「なんで年金分割するの?」
夫は声を荒らげました。

年金はおれのもんだろ!
「私には婚姻期間中の厚生年金の半分をもらう権利があるの」
「おまえは年金まで取っていくのか!おれが損になるじゃないか」
私は落ち着いて、制度上の仕組みを説明しました。
しばらく黙っていた夫は、不服そうにこう聞いてきました。
「その合意をしないとどうなるんだ」
「調停、裁判になるよ。でもそうなっても、あなたの言い分は通らない。
分割されることになるはず」

じゃあ、裁判でもなんでもしてやるわ!
「そんなの面倒でしょ? あなたがサインしてくれればスムーズに終わることなの」
必死にサインをするメリットを説明しました。
そして、「もう不貞のことは言わないから」ともう一度伝えると
夫は文句を言いながらも、渋々テーブルの上に置いてあった年金分割の合意書にサインをしました。
次に私は委任状を差し出しました。
「この委任状にもサインをしてほしいの」
「なんだこれは」
「委任状よ。手続きするときにこれがあれば、あなたが年金事務所に行かなくて済むの。
あなた仕事で忙しいでしょ」

行ってやるわ!だからサインはしない!
夫は委任状へのサインを拒否しました。私は念を押しました。
「本当に行ってくれるのね?」
「ああ、行ってやるわ!」
ここまで断言すると、もうサインはしてくれないと分かり、私は諦めました。
嘘ばかりの夫のことですから、実際その日になって本当に行くかどうかは分かりません。
それでも、合意書にサインをもらえただけで、私はほっと胸をなで下ろしました。
けれど、その一筆をもらうために、必死に自分の怒りを押し殺し、「お願い」という形で話を進めなければならなかったのは、本当に苦しいことでした。
なぜ私が“被害者”であるのに、加害者である夫に頭を下げてお願いをしなければならないのか──。
理不尽さとやるせなさで、心はいっぱいになっていました。
──この時は「合意書にサインをしてもらった」と安心しましたが、
今振り返って思うのは
夫は「裁判になってもいい」と言っていたので、離婚後、その姿勢をとるかもしれない。ということです。
調停になる可能性もある──そうなると合意書にサインをしてもらっても意味がなかったかもしれません。
離婚時、また「年金事務所に行く」と言い張るのか素直に「委任状にサイン」をしてくれるのか・・
全く協力せずに調停になった時に、慌てないよう準備をしっかりしておかねばと思います。
この会話の中で、離婚の話題になりました。
「あなたは離婚したいのよね?」と聞くと、夫は短く答えました。
「どっちでもいい」
「離婚の意思はあるってことだよね?」
「おまかせします」
自分の意見を言わず、責任を放棄するような言葉でした。
自分の意見を言わない夫。
その無責任さに、私はもう期待するのをやめようと思いました。
離婚に向けての準備を、着実に進めていくしかないのだと。
▶ 前回の記事をまだ読んでいない方はこちら →Xデー⑤ 年金分割サインを引き出すための作戦
▶ 続きはこちら →Xデー⑦その場しのぎにすぎなかった夫のサイン
※これまでの夫の裏切りの経緯は、裏切りの年表で時系列で確認できます。
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